町工場のIT活用とIoTの時代に向けて

町工場としての枚岡合金工具のIT活用の事例と、どのような考え方でIT化に取り組んできたかについてご説明いたします。また、システム開発・システム販売会社として、100社を越える町工場にITシステムを導入してきた経験から、IT活用が上手くいく会社の特徴についてご説明いたします。さらには、IoTの時代に向けての考え方についてもご説明いたします。

IT化を検討している町工場の皆さんのご参考になれば幸いです。

  1. 会社紹介
  2. 枚岡合金工具のIT活用事例
  3. IT活用の考え方
  4. IT活用が上手くいく会社
  5. Iotの時代に向けて

会社紹介

枚岡合金工具は、大阪市生野区にある会社です。1949年に冷間鍛造金型の設計・製造・販売を行う会社として創業しました。その後、1983年から社内でITの仕組みを取り入れ、2003年には文書管理・図面管理システム『デジタルドルフィンズ』を販売開始しました。さらに現在では、現場の徹底した3S活動(整理・整頓・清掃)のノウハウを伝道すべく3S活動の講演活動・工場見学会も行っています。小さな会社ですが、「町工場」「IT企業」「サービス業」という3つの顔を持っています。



枚岡合金工具のIT活用事例

1. 製品のトレーサビリティ

枚岡合金工具では、金型製品の受注から加工・納品・アフターサービスまで、製品の物流情報をデータベースで一元管理しています。自社の製品の状況がすべてリアルタイムで把握できるダッシュボードになっています。これが弊社のすべてのPCで使えるようになっていますので、どこにいてもこの情報をすぐに見に行けるようになっています。

  • 製造工程の進捗状況、各工程の加工にかかった時間がわかる
  • 不適合、クレーム、修理対応の履歴が共有される
  • 加工に関する技術的な資料や写真も集約
  • 製品の図面もワンタッチで呼び出せる


2. 加工実績のかんたん入力

では、どのようにして工場内の製品のトレーサビリティを取っているかと言いますと、現場での加工の開始と終了のタイミングでシステムに入力するようにしています。

「誰が」「いつ」「どの製品の」「何の加工を開始・終了したか」を記録しています。コンビニのレジのようにバーコードをピッと読み取るだけで記録が完結するように工夫をしています。図面に印字されたバーコードと、自分の名前のバーコードと、工程名のバーコードを読み取るだけで、リアルタイムで製品の加工状況が記録されていきます。


3. 原価分析

製品の加工時間を記録したことで、原価分析ができるようになりました。金型の原価の中には製造原価があり、その中に労務費があります。その中の加工時間、つまり「この製品を作るために、どの職人さんがどれだけ時間をかけたか?」ということが数値でわかります。

金型一つひとつが儲けを出せているかどうかが、どんぶり勘定ではなく数字で判定できるようになりました。以前は、売れば売るほど赤字になるような金型を作っていたこともありました。


4. 生産高の集計

加工時間を記録しているため、社員ごとの生産高を集計することもできます。単純に時間の長さで集計することもできますし、時間あたりどれくらいの付加価値を生む加工ができているかという指標で集計することもできます。


5. 納期の視える化

受注している製品を納期順で一覧表示できるようにしています。どの製品が急ぎかという情報が、現場の方でもすぐにわかります。

6. 作業指示書の発行

作業指示書を発行して、図面と一緒に現場に回しています。作業指示書があると、工程の流れや納期がわかります。リピート品の過去の不具合情報も加工前に一目でわかります。


7. 文書管理・図面管理

文書管理システムも自社開発して製品化してます。紙の書類を電子化しておいて、PCで検索することですぐ取り出せるようになっています。

昔の枚岡合金工具では、お客さまから昔の金型に関するお問い合わせがあった場合、いったん電話を切り、ファイル棚まで歩いて行き、紙の図面を手でめくって探してました。昔はすべての書類が紙の状態で綴じてあったので、30分~1時間かかるのはざらでした。ひどい場合だと、その日会社にいる人ではどこに図面が綴じてあるかわからずじまい、ということもありました。

しかし今の枚岡合金工具では図面番号も金型データベースですぐわかりますので、図面番号で検索すれば10秒で図面が出てきます。お客さんとの電話をつないだまま、電話口で会社の書類をすべて探しに行けるようになっています。

実はこれは、3Sに取り組まれてる会社には馴染みの深い『整頓』です。整頓とは「必要なものをすぐに取り出せるようにしておく」っていうことです。デジタルの世界ですがやっていることは書類の究極の整頓です。書類の3Sをしようと思うと、紙のままでは限界があります。枚岡合金工具ではこれを『情報の3S』と呼んでます。


8.書類の自動登録

そして現在では、書類をスキャンしただけで、書類を探すためのタグ情報が全自動で入力される仕組みを作りました。書類を探すために必要な会社名・製品名・図番といった情報は、他の販売管理や生産管理などのシステムには元々入力されていることがほとんどです。ですので、他のシステムと連携して自動的にその情報を取り出すことで、書類の登録作業が全自動で完結するようになっています。手入力だと1枚につき1分ほどかかっていた登録作業が、スキャンしただけで完了します。



IT活用の考え方

ここまでは、「どんな事ができるようになったか」をご説明しました。ここからは、枚岡合金工具が「どのような考え方で仕組みを構築してきたか」をご説明します。皆さんの会社でITを取り入れて活用して行く際に、自分の会社に本当に必要なのは何なのかということを考える軸が一つできると思います。

電子データの特性

今更ですが、電子データがここまで普及した理由として、以下のような電子データの特性があります。

通信・伝達が高速

通信・伝達が非常に高速です。情報を取るために工場の中を走り回ってはいけないということです。

複製・再利用が用意

データを複製したり再利用するのが簡単です。人間が何度も同じ情報を手入力してはいけないということです。

保管コストが小さい

保管コストが、紙の書類に比べて低いです。枚岡合金工具では会社の書類と図面が1台のコンピューターに収まっています。すべてが紙の状態で綴じてあった頃は、部屋の何割かが書類棚に占領されていました。

検索・計算・自動化できる

コンピューターによって検索・計算・自動化できます。人間が手作業で紙の書類を探したり集計してはいけないということです。


大昔は石板や羊の皮に記録していた情報が、ことごとく電子化・デジタル化していったのは、この利点が圧倒的だからです。今更な話ですが、これが非常に大切な考え方となります。というのも、町工場におけるIT活用も、これらの利点に着目して自分たちの業務を見つめなおすところから始まるからです。

IT活用の順序

1. 経営課題

まず会社には経営課題があります。製造業であれば、品質を上げたい、コストを下げたい、納期を短縮したい、そして収益性を上げたい。これは当然のことだと思います。

2. 生産革新

こういった経営課題のうち、効果の大きい部分や定型業務に対して、生産革新の取り組みをします。まず生産革新ありきです。

3. IT活用

そして生産革新の手段の一つとしてここで着目したいのが、『情報』です。つまり工場の中でどんな風に情報が行き来しているか、あるいはしていないのか、自分たちが情報をどんな風に扱ってるか、どんな情報があれば生産性が上がるのか、ということです。

我々は日頃仕事をしているとき、実に色んな方法で情報のやり取りをしています。例えば、過去の不具合や注意点を、先輩の職人さんに聴きに行く。これは情報を取りに行っています。例えば、ファイル棚に図面を探しに行く。これも紙の図面という情報を探しに行っています。例えば、リードタイムを短縮するために工場で次の段取りをしておきたいが、次にどんな製品が現場に流れてくるかわからない、これが前もってわかってたら、段取り速くなるのに……と考えます。このときも、次に投入される製品は何かという情報がほしいわけです。例えば、収益性を上げたい。そのために製品が儲かっているかどうか原価をきちんと分析したい。原価を分析しようと思うと、加工時間という情報をどうにかして現場から集めて来ないといけません。こういった生産革新する上での情報の行き来を、電子データの特性を活かしてスピードアップする。これがITの役割です。

これを踏まえて、先程挙げた枚岡合金工具のIT活用の事例をいくつか、今度はこの考え方の流れに沿って解説します。

例1. 加工実績のかんたん入力

例1-1. 経営課題

まず経営課題として、収益性を見直したいという考えがありました。金型一つひとつが儲けを出してるかどうかというのを、どんぶり勘定ではなく数値で判断したい。

例1-2. 情報の行き来に着目

原価を分析するとなると、加工時間をどうにかして取得しないといけません。では現場での加工時間の記録という作業を出来る限りかんたんに済ませるにはどうすればいいか?

例1-3. 電子データの特性を活かす

ここでバーコードの仕組みを利用することにしました。


バーコードリーダーは、読み取ったコードが表している文字をPCの画面に入力してくれます。ということは、図面にID番号を表すバーコードを印字しておいて、現場ではそれをピッと読めば、ID番号っていう情報を一瞬でシステムに入力できます。さらに、人の名前や設備の名前もバーコードの表で用意しておけば、現場では一度もキーボード打たずに済みます。これで枚岡合金工具は、金型の加工時間とトレーサビリティが確実に取れるようになりました。

例2. 作業指示書の発行

例2-1. 経営課題

金型も消耗品ですので、リピートの注文が来ます。しかし現場に回す図面だけでは、過去にあった不具合に関する情報は伝わりません。

例2-2. 情報の行き来に着目

過去の不具合情報は、それぞれの職人さんの心の中、あるいは品質管理か営業にしか情報がない状態でした。すると、知ってる人に聴きに行かないといけない、つまり情報を取りに行かないといけません。

例2-3. 電子データの特性を活かす

そこで、不具合情報をデータベースに蓄積しておいて、リピート注文が来た時に、自動的に過去の不具合情報を作業指示書の形で図面に添付。こうすることで、確実に不具合情報を共有しようということになりました。

例3. 書類の自動登録

例3-1. 経営課題

文書管理システムによって書類をすぐに検索できるようになりましたが、これ検索するためには検索用のキーワードをきちんと入力しておく必要があります。これを毎回入力する手間が若干発生していました。

例3-2. 情報の行き来に着目

図面や伝票の検索用キーワードとして会社名・製品名・図面番号・受注番号などを入れておきますが、こういった情報は生産管理システムや販売管理システムを既に使ってる会社であれば、大抵はそこに同じ情報が既に入っているはずです。そこで、その情報を再利用できるな、ということで工夫しました。

例3-3. 電子データの特性を活かす

紙の書類をスキャンした時に、書類の中から、受注番号などのキーになる情報をプログラムが自動的に読み取って、それを元に生産管理・販売管理システムと連動して必要な情報を纏めて引っ張ってきます。そうして再利用した情報を、文書管理システムに自動的に入力してしまう、そういうプログラムを作りました。

その結果、書類をスキャンするだけで全自動で必要な情報が勝手に入力されるようになりました。

ということで、まずは経営課題があり、それを解決するための生産革新の取り組みありきです。そこでようやく、ITでどうスピードアップするか、こういう順番になります。


IT活用が上手く行く会社

枚岡合金工具は100社を超える町工場に生産管理・販売管理・文書管理のシステムを導入してきました。その中で、IT活用が一気に進む会社には共通するいくつかの特徴があると感じました。

IT活用が一気に進む会社の特徴

1. 「これを使いこなして自分たちの生産性を上げるぞ」

打ち合わせに参加される現場の担当者の方たちの発想が、「言われたから来た」ということではなく、「生産性を上げるぞ」がベースになっています。現場に「生産性上げよう」という共通の価値観がまずなければ、話が始まりません。

2. 生産革新の課題に沿った要望やアイデアが出てくる

モデルケースになるような先進的なお客さまのご要望やアイデアは、まぐれ当たりではなく、ちゃんと生産性を上げるという明確な目的があって次の使い方を考えているなと思うことが多いです。

3. 決めたことを次回までにちゃんとやってくれている

お客さまと打ち合わせをして、お互いに「次回までの宿題」ができる場合があります。弊社ではもちろん仕事ですので、次までには宿題をやって行きますが、お客さまの方では宿題の進捗はまちまちです。ここできっちりやってきてくれているお客さんは、やはり活用が進むのも速いです。

4. 取り入れたものがすぐにルールとして習慣化される

ITの仕組みが導入されると、仕事のやり方もガラリと変えざるを得ない部分も当然出てきます。また、会社全体で全体最適を目指しますから、部分的にはむしろ作業が増えてしまうことも起き得ます。そんなときでも、新しいやり方に切り替わる・浸透するのが早いお客さまは、当然、一気に活用が進みます。

こういったお客さまの特徴を支えているのは、次のような要素ではないかと思います。

2つのリテラシー

生産革新リテラシー

  • ムダとは何か? なぜそれがいけないか?
  • どんな状況が自分たちの生産性を下げがちか?
  • どんな情報を得れば自分たちの生産性は上がるか?

これは会社で時間取って勉強する必要があります。例えば、自分の作業の範囲で不適合出して作り直すはめになったら、「もったいないことしたな」「ムダが発生したな」というのは誰でもわかることだと思います。しかし工場では、たくさんの工程の中にたくさんの人と在庫が動いていて、自分の体感できない場所で影響しあいます。その中で組織として最大のスループットを出そうと思うと、生産革新の理論を会社の皆でコツコツと学ばなければいけないと思います。

ITリテラシー

  • 情報は高速で伝達・再利用できるということを知っている
  • ITでの解決方法にはどのような前例があるか?
  • 自社の経営課題・生産革新と結び付けて次の手を想像する

パソコンが得意かどうかというのもITのリテラシーですが、ここで求められることは少し違います。この嗅覚は生産革新のリテラシーと両輪の存在で、なかなか簡単なことではないです。

決めたことを守る企業風土

もう一つ挙げると、決めたことを守る企業風土というのが大事です。ITが何とかしてくれるわけではなく、あくまで人間側が、きちんとルールを運用しなければなりません。ITはただ速いだけです。

弊社も色々な会社にITシステムの導入や3S活動の指導をしてきましたので、よくわかります。一番難しいのは、ここまでで説明したどんな座学的なことよりも、「変わること」です。会社の体質を変えることが一番難しいのです。

新しいもの取り入れて生まれ変わるには、決めたことを守るのが必須です。逆説的ですが、変わるには、守れなければだめなんです。

(このように「決めたことを守る」企業風土を作るのに、枚岡合金工具としての一番のおすすめは3S活動ですが、今回の趣旨からすると抜本的すぎるので)まずは、「誰がいつまでに何をするか」ということを決めて、それに対して定期的にチェック、フィードバックをしっかりする習慣を作ることが、大事ではないかと思います。

チェックする習慣

  • 誰が
  • いつまでに
  • 何をするか

この字面だけを見ると小学生の宿題のように思うかもしれませんが、果たして会社の全員がこれをキッチリできる体質になっているかと考えると、決して簡単なテーマではないと思います。


IoTの時代に向けて

最後に、これからのIoTの時代に向けての考え方についてもお話しします。

IoTという言葉は最近よく飛び交ってますが、その人が売りたいものによって言葉の意味や解釈がコロコロ変わる便利な言葉になってしまっています。ここでは、「従来のPC以外に色々なものがネットワークにつながっている状態」ということで話を進めます。


最近は色々なものがネットワークにつながるようになってきました。「これもIoTだ!」と言って靴や冷蔵庫までインターネットにつながる商品も出てきたりと、何でもありになってきています。最近のニュース等を見て、「これもIoT? こんなんどうやって使えっちゅうねん?」と思われた人もいると思います。あるいは、「大企業がやっているような自動化とか、あそこまで仰々しいことを町工場でやる必要ってあるの?」「どこから手を付けたらいいの?」という疑問もあるでしょう。

我々中小企業が考えるべきことというのは、実は先ほどの図式とまったく同じです。

まず経営課題があり、生産革新に取り組む、その上で、今度は情報の出入り口の手段が、徐々に増えつつあるんだ、という風に考えるといいと思います。

最近はIoTの名のもとに何でもかんでもインターネットにつながる商品が出てきていますが、上記の図式に沿ってないものは所詮は一般消費者向けのアイテムです。自社の生産革新のシナリオに見合うものを取り入れていけば問題ありません。

ただし、IoTは言葉が独り歩きしているのとは裏腹に、その土台になる技術は年々地道に進歩してきています。ですので、近い将来には、今までに無かったような方法で現場の情報を収集したり分析できるような、そういった手段が少しずつ町工場にも手頃な存在になってくると思います。そのとき、この視点をちゃんと持っていると、自分たちに何が必要かということについて惑わされることはないでしょう。

我々中小企業は何をなすべきか

最後に纏めとして、IT活用を一気に定着させるために、そして今までにない手段が出てくる時代に備えて、我々中小企業は、今、何をしておくべきか。

この3つを会社の皆で研ぎ澄ましておく、これに尽きると思います。この3つは、製造業をやる以上、どのような時代になっても一生使うものであり、いずれも急ごしらえのできない部分でもあります。

以上、ご参考になれば幸いです。そして、もしITシステムの導入をご検討の際は、枚岡合金工具にご相談いただければ幸いです。

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